運動介入が高齢者における脂質分子種の血漿濃度変化に 及ぼす影響

川西範明、横関京介、加藤祐樹、

沢田秀司、高橋将記、桜井良太、

藤原佳典、新開省二、合田亘人、

○鈴木克彦

 超高齢社会を迎えた現代において、高齢者が健康で自立した生活を営むことができること、いわゆる「健康寿命」の延伸の重要性が高まっている。加齢とともに変化する代謝変化は、健康寿命を脅かす糖尿病、動脈硬化や神経変性疾患などさまざまな疾患の発症に深く関与している。一方、適度な運動がこれらの疾患の発症や進展に抑制的な作用を示すことが報告されているが、因果関係を明確に示す科学的なエビデンスは十分とは言えない。昨年度、我々は加齢による脂質代謝の変化を捉えるために、血清中に含まれる脂質代謝産物の網羅的定量解析を行った。その結果、TAG(52:3)およびTAG(52:4)の中性脂肪群、またエステル結合型のホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルエタノールアミン(PE)のそれぞれの血清中濃度が、若年者と比較して高齢者で高いことを見出した。今年度は、健康な高齢者における脂質代謝に対する運動介入の影響を明らかにすることを目指した。3ヶ月間の運動介入前後の高齢者血漿サンプルのリピドーム解析を行った結果、TAG(52:3)、TAG(52:4)およびTAG(54:4)の血中濃度が運動介入後に低下していた。また、エステル結合型のPCおよびPEも同様に低下していることを見出した。一方、エーテル型のリン脂質の動態には大きな変化は認められなかった。これらの結果は、加齢によって変化した生体内の脂質代謝が運動により改善することを示しており、またこれらの脂質代謝産物が簡便な老化度判定の指標として活用できる可能性を示唆していると言える。