骨格筋由来因子が乳ガン細胞のエネルギー代謝に及ぼす影響

東田一彦、仙波憲太郎、○樋口満

 近年の大規模疫学研究により、習慣的な身体活動が乳ガン発症や再発を低下させることが明らかとなってきている。この身体運動の乳ガン発症抑制効果は欧米諸国だけでなく、日本人女性においても確認されている(Suzuki et al. Pre Med 2011)。しかし、「なぜ身体活動は乳ガンの発症を減らすことができるのか?」という、分子機序は明らかではない。

身体運動を行うことで骨格筋から様々な分子が分泌されていることが近年明らかにされている。そこで本研究計画では、身体活動による乳ガン抑制効果に骨格筋由来因子が関与しているとの仮説を立て、骨格筋由来因子がガン細胞の増殖能に及ぼす影響を検討した。

3種類のヒト由来乳ガン細胞株(MCF-7、MDA-MB-231、BT-474)を骨格筋由来因子(CTRP15)と共に培養し、48時間後に細胞増殖能を測定した。CTRP15はMCF-7細胞株において細胞増殖能を低下させたものの、MDA-MB-231およびBT-474細胞株の増殖能には影響を及ぼさないことが明らかとなった。さらに、CTRP15はMCF-7におけるアミノ酸トランスポーターの一つであるL-type amino acid transporter 1 発現量を減少させた。これの結果から、骨格筋由来因子CTRP15は乳ガン細胞のエネルギー代謝を調節することで増殖能を低下させる可能性が考えられる。