毛包細胞を用いた時計遺伝子発現パターン解析

原口敦嗣、高橋将記、依田卓也、

細川正人、谷澤薫平、樋口満、

竹山春子、○柴田重信

 地球上には明暗サイクルなどの約24時間のリズム(概日リズムまたはサーカディアンリズム)が存在している。ヒトにもサーカディアンリズムは存在し、睡眠-覚醒リズムや体温リズムなどの生命活動がそれにあたり、これらの生理機能にサーカディアンリズムを作り出す機構は「概日時計(体内時計)」と呼ばれている。概日時計は時計遺伝子と呼ばれる遺伝子群によって構成されており、これらの遺伝子が転写・翻訳フィードバックループを構築することで約24時間のリズムを作り出している(Buhr & Takahashi, 2013)。

ヒトの時計遺伝子発現リズムを計測するためには、1人から経時的にサンプルを採取する必要があるだけではなく、簡易・低侵襲に採取できることが重要となってくる。近年、毛髪や髭の毛根に存在する毛包細胞を利用して、ヒトの時計遺伝子の発現パターンを計測する手法が提案された(Akashi et al., 2010)。当研究室では、本手法を用いて特殊な生活(睡眠相後退症候群や夜食症候群、社会的時差ボケ)を送っているヒトの時計遺伝子の発現パターン解析を現在行なっている。

一方、毛包細胞から抽出できるRNA量は毛髪の採取時の状態や個人によって大きく変動することがわかっている。被験者にとって、より低侵襲かつ採取頻度を軽減した分析法を確立するためには、従来よりも少ない本数の顎鬚からでも確実に時計遺伝子発現を定量できる手法が求められる。そこで、1細胞の遺伝子発現解析に利用されるBead-seq法(Matsunaga et al.,2015)の利用を検討し、少ない本数の顎髭や毛髪を用いた遺伝子発現パターンを比較評価した。